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乳がん患者で医師…道標となった小倉恒子さん「私にかできないこと」(産経新聞)

 【葬送】最初に取材したのが3月1日。明るく強い女性という印象だった。「凛とした」という表現がぴったりの。それだけに、取材から3週間足らずで届いた訃報には「まさか」と耳を疑った。

 医師でありがん患者。「両方の立場が分かる私にしかできないことがある」と、同じ病気と闘う仲間に、自らの体験を自著やブログで発信し続けた。自宅では悩めるがん患者の電話相談にも応じた。

 34歳で乳がんを発症。再発を繰り返しながらも、医師の仕事は倒れるその日まで続けた。趣味のダンスも精力的に取り組み、がん患者でも、楽しく生きられることを体現。がん患者の道標のような存在だった。

 つらい抗がん剤の副作用も前向きにとらえた。薬には「クリスタルソルジャー」「ファイアオパールソルジャー」など、大好きな宝石のあだ名を付けて、がんと戦う戦士に見立てた。吐き気や脱毛の副作用も「薬ががんと戦ってくれている証拠」と受け入れた。

 そんな小倉さんが晩年に取り組んでいたのが「ドラッグ・ラグ」の問題だった。海外では使われている薬が、日本での承認が遅れて使えないという問題だ。

 10種類以上の抗がん剤を使ってきた小倉さんも、最後は使える薬がなくなり、数十万円もする高額な未承認薬を海外から個人輸入していた。「薬が目の前にあるのに使えないなんておかしい」。亡くなる直前に書いた最後のブログのテーマもドラッグ・ラグだった。

 23日のお別れ会には医療関係者や患者団体など100人以上が別れを惜しんだ。あいさつに立った父、孝さん(84)は遺影を前に声を震わせた。「医者で患者という立場を自覚し、よくがんばった。ほめてあげたい」。3月19日、乳がんのため死去。享年57。(蕎麦谷里志)

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